ICUにおける血小板輸血 その適応

血液・凝固・輸血

「先生、CV留置を考えていますが血小板が1.5万/μlなので輸血します」

ICUにおける血小板輸血は、血液疾患を背景にした病態に対することもありますが、敗血症でのDICなど非血液疾患に伴う減少に対して対応することのほうが多いかと思います。
敗血症に伴うDICはICU患者では9〜19%で発症するとされ、もはやcommonな状況とも言えそうですが、非常に稀ですがTTPやHUSでの血小板減少患者も紛れ込んでおり、その鑑別は重要になってきます。(ちなみにVincent et al. Critical Care (2018) 22:158で鑑別のためのアルゴリズムも紹介されていました(図1))
(図1.DICとTTP, HUSを鑑別するアルゴリズム:Vincent et al. Critical Care (2018) 22:158を参考に筆者が作成)

CV挿入に伴う血小板輸血の閾値は”Plt>2.0万/μl”?

さて話を戻しますが
つい最近New England Journal of Medicineにて「血小板数が1〜5万/μlの患者のCV留置において、予防的血小板輸血を投与しないことでCV関連の出血は増えた(論文としては「血小板輸血をしないことは、輸血することに対しての非劣性を示せなかった」)」という報告が出されました( N Engl J Med 2023; 388:1956-1965)。(表現がややこしい)
輸血しないほうが出血の合併症が多かったよ、という報告ですが、血小板1万/μlならまだしも血小板が3〜5万/μlある中でエコーも使用して11.2%で出血の合併症が起きた、というのは非常に興味深いと言いますか身が引き締まる思いです。
(N Engl J Med 2023; 388:1956-1965より)
ここで改めて、ICUにおける血小板輸血の閾値のおさらいをしておきます。
ICUならではというより、処置に伴う血小板数を目安に輸血閾値を決めて対応していう施設がほとんどかと思います。下の表が処置に伴う血小板閾値の紹介。日赤の血液製剤の使用指針からのコピーです。
ここに、「処置の予定はなくても、自然出血のリスクから少なくとも血小板数<1.0万/μlでは輸血を行う」を追加して運用されている施設も多いのではないでしょうか。
今回のNEJMの報告を合わせても、これまで通りこの使用指針に従う形での運用を変更する必要はなさそうですね。
【今回参考にした文献】

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