腹臥位療法でなぜ酸素化は改善するのか?

呼吸管理

「腹臥位にすると、胸が広がりにくくなりそうですが、どうして酸素化が改善するのですか?」

研修医の先生から腹臥位で酸素化が改善する理由について質問を受けることがあります。
見出しの質問の通り、腹臥位にすると背中側は脊椎が、腹側は床が胸郭の広がりを妨げるので、胸郭のコンプライアンス自体は仰臥位→腹臥位にすると低下すると言われています。
なんとなく「換気血流比が改善して・・・」というのは周知のことかと思いますが
ではどのようにして腹臥位療法が換気血流比を改善させるのか見ていきます。

①腹臥位による血流の変化

まず肺の血流に関してですが、仰臥位でも腹臥位でも血流量は背側が優位になると言われています。[下図]
(CHEST 2017;151(1):215-224より. 筆者にて一部加筆)
いかに背側が血流を担っているかがわかりますね。ちなみに赤い部分はシャントになっている部分の割合なので、仰臥位ではシャントが多いことがわかります。

②腹臥位による換気の分布の変化

そして換気に関しては、仰臥位では腹側の含気はよいですが背側の含気は低下しています。むしろ腹側肺は過膨張になります。[下図 左]
腹臥位にすることで、再分布が起き、背側肺でも換気されるようになります。腹側肺の過膨張も改善し、換気が腹側〜背側で均一化されます。[下図 右]
もともと容積の大きい背側の換気が改善するので酸素化にも有利に働き、また腹側の過膨張が改善すればvolumetraumaのリスクも軽減します。
(Presse Med. 2011; 40: e585–e594より)
仰臥位から腹臥位にすることで、陰影が再分布し、背側の含気がよくなっています。
よって、腹臥位を行うことで
血流が多い背側で換気が改善することで、換気血流ミスマッチが改善し酸素化がよくなります。

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