経肺圧について考える ②実践編〜測定方法・画面の見方〜

呼吸管理

前回は経肺圧の総論として、経肺圧とは何か、吸気や呼気時におけるその意味や管理指標などを紹介しました。(「経肺圧について考える ①総論編〜経肺圧の概念について〜」参照)

今回は実際にどのように経肺圧(食道内圧)を測定するのか、呼吸器の画面では何を見れば良いのか、などを紹介します。

食道内圧を測定しよう

経肺圧は気道内圧と胸腔内圧とを合わせたものですが、胸腔内圧を直接求めることは侵襲的であり困難です。そこで食道内圧を測定して、胸腔内圧の代用として用います。写真は筆者の病院で使用している食道内圧モニター(日本光電)です。(筆者と日本光電とに特別な関係はございません)

食道内圧モニターは通常のNGチューブの途中に圧センサー(バルーン)がついています。よってNGチューブとして栄養を投与しながら、一方で食道内圧を測定できます。測定方法は、通常のNGチューブのように挿入しバルーンが下部食道1/3の高さに留置されるように調整します。具体的には想定より深めに挿入し、その後引き抜きながら心臓の拍動が食道内圧波形に現れるところを探し(その際に胸を圧迫して得られる気道内圧や食道内圧の波形を参考にします)、最終的にレントゲンで最終位置の決定を行います。留置できれば、バルーンに6mL空気を入れ、2mL抜いて4mL残した状態で完成です。あとは呼吸器に接続すれば食道内圧の波形や数値が得られます。 日本光電社「食道内圧バルーンカテーテル」資料を用いて作成)

呼吸器のグラフィックを見てみよう

では実際に呼吸器の画面ではどのように見られるのでしょうか。筆者の施設で使用しているHamilton社の人工呼吸器(C6)の画面を参考に紹介します。(筆者とHamilton Medical社とに特別な関係はございません)

まず画面の見方としては、一例として写真のように上から「気道内圧」「フロー波形」「食道内圧」「経肺圧」としています(画面の波形の種類や順番はもちろんカスタム可です)。食道内圧モニターを人工呼吸器に接続することで、食度内圧の変化が気道内圧と同様にグラフ化・数値化されます。それにより気道内圧と食道内圧の変化から自動的に経肺圧もグラフ化・数値化されます。そして画面を止めて、測定したいタイミングにカーソルを動かすことで測定ができます(測定値は各波形の名称の横に表示されます)。

一つポイントとして、自発呼吸の有無で食道内圧の波形の形が変わります(上に凸or下に凸)。これは自発呼吸がある場合は、胸腔内に発生した陰圧の胸腔内圧で食道が引っ張られるのに対し、自発呼吸がない場合は人工呼吸器による陽圧により発生した胸腔内圧が食道を押すことによる違いです。(経肺圧は自発の有無に関わらず、数値の違いはあれ形は似たような形になります)

吸気時経肺圧であれば、吸気時終末にカーソルを合わせると数値が得られ、呼気時経肺圧であれば呼気時終末にカーソルを合わせることで得られます。また経肺圧の変化量:Δ経肺圧は、先の方法で得られた吸気時経肺圧と呼気時経肺圧の差を計算することで算出されます。

このようにグラフで見てみると、いかに自発呼吸下では肺に圧(ストレス)がかかるかがよく分かると思います。もちろん自発呼吸には無気肺の改善や横隔膜機能への寄与などメリットもありますが、肺保護換気を要する呼吸不全の急性期においては抑えたいですね。

またAdvancedな知識として、最近では「ΔPes:食道内圧の変化量」も肺保護管理の目安に用いることができるとして注目されています。測定方法はΔ経肺圧と同様に、食道内圧の最大値と最小値を測定し算出します(自発呼吸の有無で食道内圧の波形が変化するので注意が必要です)。ΔPes:食道内圧変化量<10cmH2Oが管理の目安になります。

以上、今回は呼吸器の画面を参考に、実際の測定方法を紹介しました。前回紹介した経肺圧総論と合わせて、ぜひ日々の診療に経肺圧・食道内圧を活かせるようになりたいですね。

(※食道内圧には、他にも患者-人工呼吸器 非同調の検出など経肺圧の測定以外にも測定の有用性が言われています。また機会があれば紹介しますね。)

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