気管切開は早い方がいい? ICUでの早期vs晩期気管切開まとめ

呼吸管理

「先生、この患者さん抜管が難しいと思うので、早めに気管切開をした方がいいと思います。」

人工呼吸管理が長期に及ぶ場合は気管切開の適応になります。「長期」とは一般的に21日以上のことを言いますが、21日(=3週間)以降の気管切開に関してはエビデンスが不足しており、あくまでエキスパートコンセンサスです。でも確かに、あまりに遅い時期に気管切開をすることは良くはなさそう、と感覚的には皆さん納得がいくかと思います。
上記コンセンサスもあり一般的に気管切開は「2週間」を一つの区切りに施行を検討されている施設が多いのではないでしょうか?ではその2週間の中でも早い時期/遅い時期のいつ気管切開を行うのがよいかは、まだ明確な指針はありません。
早期?晩期?決まった定義は無い
気管切開の時期に関する研究が数多くあるのに、決まった指針が示されていない原因の一つとして、早期・晩期の定義が各研究で違うことが挙げられます。同じ「早期」といってもそれぞれバラバラなので、確かに決まった指針としては示せない。
今回は、そんな中でも気管切開の時期に関する代表的な報告を何点か紹介しようと思います。
(偶然にも全てJAMAの報告です。狙ってわざと揃えたわけではありません。)
早期気管切開vs晩期気管切開 代表的論文
① JAMA 2010, 303 (15), 1483-1489.
2010年の600人を対象としたRCTです。エントリーの際に肺炎患者は除外されているのは特徴かもしれませんね。気管切開は全て経皮的気管切開で施行されています。
早期群:挿管後6〜8日で気管切開 vs 晩期群:ICU入室10日以降に気管切開
主要評価項目:VAP発生率で有意差は認めない(早期群 14%、晩期群21%、p=0.07)
副次評価項目:ventilator free daysは早期群で長く(11日vs6日、p=0.02)、死亡率は有意差なし
② JAMA 2013, 309 (20), 2121-2129.
こちらは2013年の909人を対象としたRCT。気管切開は各施設の判断で経皮的/外科的が選択されています。
早期群:ICU入室4日以内に気管切開 vs 晩期群:挿管後13〜15日で気管切開
主要評価項目:30日後の死亡率で有意差は認めない(早期群 30.8%、晩期群31.5%)
副次評価項目:2年後死亡率(51%vs53.7%)、ICU滞在期間(13.1日vs13.1日)で有意差なし
③ JAMA Otolaryngol Head Neck Surg 2021, 147 (5), 450-459.
今度は2021年9月17日年の14本の論文(対象患者数3145人、早期群:1619人、晩期群:1526人)を解析したmeta-analysisです。
早期群は「挿管から7日以内に気管切開術施行」を満たすものとされています。
主要評価項目:VAPの発症数は早期群で有意に少なく、人工呼吸期間に有意差はないがventilator free daysは早期群で長かった
副次評価項目:死亡率に有意差はなかったが、ICU滞在期間は早期群で有意に少ないという結果であった。
④ JAMA 2022, 327 (19), 1899-1909.
最後は2022年の急性期脳卒中(脳梗塞/脳出血/くも膜下出血)で挿管管理となった患者を対象としたRCTです(=”SETPOINT 2 stydy”:先行研究であるSETPOINT studyからサンプルサイズを増やし多施設研究に)
“SET score≧10点”が気管切開の適応として設けられています(下図)。ちなみに気管切開は経皮的気管切開術がFirstの術式として選択されています。
早期群:挿管後5日以内 vs 晩期群:挿管後10日以降
主要評価項目:6ヶ月後の臨床転機(modified Rankin Scale scoreで評価)に有意差はなし
副次評価項目:死亡率・ICU滞在期間・人工呼吸weaning開始時期・鎮静薬離脱割合に有意差なし
(上図:SET score。10点以上で気管切開の適応。日々の評価の参考になります。)

代表的なものを挙げてみました。
早期気管切開がより有効だろうと予想される脳卒中患者で結果に有意差が出なかったことは少し驚きですが、といって早期気管切開の有効性が否定されたわけではありません。
他の報告を見てみても早期群で有害事象が多いという事はなさそうです。どちらかというと有意差はなくとも早期群にメリットがありそうな印象ですね。ただ注意点は、よく指摘されるように早期気管切開群には「そもそも抜管が可能なくらい状態が良い患者が含まれている」「そもそも早期に気管切開が施行できるくらい状態が良い患者が多いかもしれない」といった側面もあるかもしれません。
現時点では早期vs晩期に決着はついていないですので、現場では患者の状態・病院の体制に合わせて施行時期を検討していくのが現状ですね。
また脳卒中患者での”SET score”は日常の診療においても参考所見として評価するようにしたいですね。
【今回取り上げた論文】
(①〜④は上記紹介した①〜④に対応。⑤は”SET score”に関する文献)

コメント

タイトルとURLをコピーしました