「胸水貯留してるんですが、呼吸器内科の先生に相談してから穿刺しようと思って。。。」
研修医の先生からよく言われることがあります。確かに胸腔穿刺はその合併症(気胸、出血など)からもハードルの高い手技と考えられがちですが、検査の閾値はもっと下げていいのにな、と思っています。
下は少し古いですが2010年のBTSガイドラインから、片側胸水のアプローチに対するフローチャートです。(BTSガイドラインはフリーアクセスなので、僕自身もよく参考にしていました)
このように「明らかに漏出性の胸水ではなさそう」→「胸腔穿刺」とガイドラインでは薦められています。ですので、原因がよく明からない片側胸水は胸腔穿刺をぜひ検討するようにしましょう。それで怒る呼吸器内科はいないと思います。個人的には「熱出たからとりあえず血液培養」と同じレベルで「片側胸水なんでとりあえず穿刺しました」でも悪くないのにな、と思ったりしています。
「先生、Lightの基準では滲出性胸水でした!(エヘン)」
これも非常によく研修医の先生から言われます。確かにLightの基準は胸水評価の基礎の基礎、第1歩目なので使えなければいけません。でもできれば、そこからさらに一歩進めた評価ができればより良いですね。(ちなみに余談ですがLight先生がLightの基準を生み出したのは研修医の時らしいです・・・(◎_◎;)スゴイ)
具体的には「白血球の分画を評価する」ことをしてみましょう。
こちらも上記と同じガイドラインから。好中球が優位な場合はみんさんも感染を一番に考え、他には非感染での何らからの胸膜炎の病態を考えるかと思います。ポイントはリンパ球が優位な場合。「癌」と「結核」は呼吸器内科医にとって至上命題なのでこちらは外せないとして、癌と結核以外にも鑑別が挙げれるようになれればより良いですね。また気胸や出血性病変などで好酸球が上昇することは知っていないと解釈は非常に難しいですよね。好酸球でも悪性疾患は必ず鑑別に挙げる必要がありそうです。
「この胸水、ドレナージ必要?」
最後にドレナージに関して少しだけ紹介します。これも数多くの報告・提言があり、基本的には「複雑性胸水はドレナージする」の理解でよいかと思いますが、ここでは古いですがよく引用される2000年CHESTのACCP(American College of Chest Physicians) Consensusからのガイドラインを取り上げます。
上の表は多くの方が見たことはあるのではないでしょうか。項目も「胸水の解剖学的評価」「細菌学的評価」「pH」と非常にすっきりしています。念頭に置いているのはやはり「膿胸」です。Pleural loculation、すなわち膜で包まれたような胸水、肥厚した胸膜などは膿胸を示唆する所見ですし、”pus”もいわゆる「膿」、pHの低下も細菌感染を示唆していますね(髄液と同様)。
胸水は「迷ったら刺す」「疑ったら抜く」の精神で対応するくらいでいいかもしれません。
ぜひ皆様も色々とガイドラインを見てみてください。ちなみに胸水の勉強に個人的にオススメな教科書は「胸膜疾患のすべて」。名著ですね。マニアックですが。
【参考文献】
【参考図書】
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