低Na血症の補正 補正速度>8mEq/L/dayとODSの関係について

腎・電解質

先生、低Na血症の患者のNa値が1日で15mEq/L上昇してしまいました、、、

低Na血症の補正に関して、2014年のEuropean Journal of Endocrinologyで改定されたガイドラインにもある通り、「最初の24時間の上昇値は10mEq/L以下、以降の24時間の上昇値は8mEq/L以下にする」という鉄のルールがありますね。(急性発症は除く)
ODS(osmotic demyelination syndrome:浸透圧性脱髄症候群)を未然に防ぐため我々もこの補正上限を徹底した管理を行なっていますが、この補正速度に関して報告がありました。しかも日本人の先生です。
Method
対象としては
P:ICUに入院したNa<120mEq/Lの患者
 I:最初の24時間のNa補正>8mEq/L/day
C:最初の24時間のNa補正<8mEq/L/day
O:院内死亡率、神経学的合併症、ICU滞在日数、入院日数
上記で検討されています。最初の24時間の補正速度の比較ですね。(急性の低Na血症か慢性の低Na血症かの区別はされていません)
Result
①急速補正群(Na補正>8mEq/L/day)の方が院内死亡率が低く、入院期間・ICU滞在期間は短かったという結果でした。(補正が早く進むのでICU期間や入院期間が短くなることは想像できますが、死亡率の低下は入院期間の低下が影響したのでしょうか?)
②問題の神経学的合併症に関しては補正速度の増加に伴い合併症が増える可能性が示唆されたが、結局複数の交絡因子を調整すると神経学的合併症の発生率に差は見られませんでした。
これは補正率を<8mEq/L/day、8〜12mEq/L/day、>12mEq/L/dayと比べても同様でした。
もちろん急性/慢性の低Na血症の区別はできてなかったり研究としての制限はありますが、我々はODSのリスクを過剰に懸念しすぎているかもしれませんね。
ODS自体は非常に稀な合併症(報告によっては0.05%等)であり、確かにリスクを回避することは重要ですが、過剰な補正制限に伴う有害事象(ICU期間や入院期間の延長、そして結果的に死亡率の上昇)にも注意を払う必要があるかもしれません。
【今回取り上げた論文】
【参考文献】
↑2014年European Journal of Endocrinologyの低Na血症ガイドライン

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