急性腎不全に対する腎代替療法のタイミングは早い方がよい?

腎・電解質
ICUいおいてAKI(Acute Kidney Injury)は頻度の多い疾患であり(最大50%!)、腎代替療法(RRT: Renal Replacement Therapy)を経験することも多いかと思います。
K>7.0mEq/Lなど誰の目にも明らかな緊急透析の適応があればわかりやすいですが、急性肺水腫や重度の代謝性アシドーシスや高カリウム血症がない場合、RRTはどのタイミングで行うのが良いのでしょうか?
今回はRRTの開始のタイミングについて( Initiation vs Delayed )検討されたRCTのレビューを紹介します。
Method
対象としては
P:18歳以上のAKI患者
 I:早期にRRTを検討
C:RRTの施行を遅らせる戦略
O:28日、90日の死亡率
上記での評価です。特にRRTのmodalityに関しては言及されていません(CRRTでもIHDでも)。
さて結果はどうだったでしょうか。
Result
①まずは主要なアウトカムである28日死亡率では差が認められませんでした(早期38.4% vs 遅延38.0%)。90日死亡率やCU死亡率など数が少ないにしてもこちらも差はでませんでした。早くにRRTを行うことで死亡率の改善は得られなさそうです。
②RRT開始時期に関しては、各研究で早期、遅延の基準が異なりますが、RRT開始時間の中央値としては早期群:2〜7.6時間、遅延群:21〜57時間でした。
③筆者が興味が惹かれたのはRRTを実際に施行された割合で、早期戦略群は実に97.2%の患者がRRTを施行されているのに対し、遅延戦略群は62.5%の施行にとどまっていました。これは遅延戦略群では治療の経過とともに腎機能が改善し透析を必要としなくなった患者が多数いた可能性が示されました。すなわち、早期群の中にも透析が実は必要でなかった症例が紛れ込んでいると考えられます。
④RRTの介入による有害事象としては、低血圧が報告されていました。これは特に早期戦略群で多くみとめられています。またRRT関連の感染症も報告されており、こちらもやはり早期戦略群での発生率が高くなっています。
以上、筆者の興味に基づく抜粋でしたが、どうも血圧低下や感染症の発症のリスクを推してまで早期にRRTを施行するメリットは乏しいように思われます。
少なくともAKIでICU管理となった患者のRRTのタイミングに関しては
・重度のアシドーシス
・著明な高カリウム血症
・急性肺水腫
・尿毒症(他3つに比べ弱いですが、、、)
といった緊急での急性血液浄化が必要になれば施行する、というスタンスでよさそうですね。
そのタイミングは逸することのないよう注視しながらも、不必要なRRTで血圧低下や感染の増加は避けたいものです。
【今回参考にした文献】

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