DKAの治療における血糖値の低下速度の目安は?

代謝・栄養

「先生、インスリンを投与して血糖値が1時間で1000mg/dL→500mg/dLに改善しました」

DKAでは①輸液②Kコントロール③インスリン療法が初期治療の3本柱であり、当然血糖値を下げることは治療の目的の一つです。
ただその血糖値の低下に関して、当然血糖値は浸透圧の形成に寄与し、急激な補正は意識障害を引き起こします。
Naの治療においてはODS(Osmotic Demyelination Syndrome:浸透圧性脱髄症候群)への懸念からNa値の変化量に対する意識が高いですが、
DKAやHHSにおける血糖値の低下速度に関しては、現場であまり意識されていない場面が多いように感じます。(筆者だけ?)

そこで、今回はDKAの治療における血糖値の低下速度の目安を確認したいと思います。


1.アメリカ糖尿病学会ガイドライン
筆者もよく参考にしたガイドラインでは「血糖値は1時間あたり50〜75mg/dL(2.8〜4.2mmol/L)の速度で低下できていなければインスリンの使用を検討」と紹介されています。
2.イギリスの糖尿病学会ガイドライン
こちらは1時間あたり54mg/dL=3mmol/L以上で低下させる、と記載されています。過去のガイドラインでは1時間あたり72〜90mg/dL=4〜5mmol/Lのペース(つまり1時間あたり54〜90mg/dL)で低下させると紹介されていましたが、最近のガイドラインではその記載を見なくなりました。また”血漿グルコースの急激な変化による大きな浸透圧シフトの理論的なリスクは非常に稀”との記載もあり、そこまで恐れなくてもよいのかもしれません。
3.ISPAD(国際小児・青年期糖尿病学会)ガイドライン

ついでに、こちらも紹介します(恥ずかしながら今まで見たことありませんでした)。こちらでは1時間あたり90mg/dLを超えない速度で低下させるべき、と記載されています。


他にも紹介しているものはあると思いますが、概ね1時間あたりの血糖値の低下速度は「50〜90mg/dL」で経過させるのが落とし所としてよさそうですね。
これはあくまで持論ですが、糖尿病性ケトアシドーシスは非常に重篤な病態ですが、治療方法を知っていれば研修医の先生方が一人でも対応できると思っています。
また最近の報告などもとりあげて紹介したいと思います。
【参考文献】

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