先生、この患者さんは目を覚ますのでしょうか?
心肺停止状態になり何とかROSC(Return Of Spontaneous Circulation:心拍再開)が得られたとしても、意識までは改善が得られてないことも多いと思います。
2021年にERC/ESICMから蘇生後のケアに関するガイドラインが出されていますので、蘇生後の脳の機能予後評価のアルゴリズムを、その前版の2015年度版と比較して紹介します。
評価の項目は①対光/角膜反射②SSEP波③脳波所見④NSE値⑤CT/MRIの画像所見
まず前提条件は、蘇生後72時間の時点でのGCS評価でM3の意識レベルであることです。そして対象であれば、上記5項目の評価を行い、少なくとも2つ以上満たした場合には、脳の機能予後は不良であると判断します(満たさない場合も、決して「予後良好」ではありません。あくまで「予後不良には該当しない」というだけで、その後もどうなるか観察、評価が必要です)
低酸素脳症におけるBurst Suppressionは脳の予後不良のsignです。てんかん重積で鎮静管理を行う際にBurst Suppressionが見られた場合は十分鎮静が得られていると判断できます。場面によって評価が変わりますね。ミオクローヌスも普段であればそこまで重く捉えないかもしれませんが、このような場面で見られた際には予後不良のsignになります。(ちなみにSSEPとは短潜時体性感覚誘発電位、N20のNは脳の部位に関してで20は大脳体性感覚野のことのようです。筆者もこの領域は詳しくありません。スイマセン)
(Burst Suppression波形の例:Brain Dev.2013 Oct;35(9):827-41より)
2015年→2021年で評価のステップが変わった
これが最も大きな変化でしょうか。評価する項目自体は大きく変わってはいません。
2015年は①まず72時間の時点で(GCSで)M1-2の意識レベル→②対光反射/角膜反射の消失 他→(消失していない場合は)③さらに24時間待って[ミオクローヌスの所見・NSEの値・脳波でBurst Suppressionの存在・画像で低酸素脳症の所見]を評価することになります。
これが2021年では①72時間の時点でM3以下の意識レベル→②[対光/角膜反射・SSEP波・NSE値・ミオクローヌス・画像所見]を評価することになるので、M3の意識レベルも対象となり、24時間待って96時間の評価をすることは無く、また2015年では前提条件であった対光反射/角膜反射の消失や、N20のSSEP波の消失は、他の所見と同等レベルの評価項目にかわりました。
今回は脳の予後評価のアルゴリズムを紹介しましたが、ガイドラインは他にもTTM含めた蘇生後ケアやの保護の話、また集中治療室の管理の方法や臓器提供などに関しても述べられているので、ぜひチェックしてみてください。
【参考文献】
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