臥位の胸部レントゲンの見方③ 胸水編

呼吸管理
臥位レントゲンの第3弾:胸水について紹介します。気胸と同じく、胸水も立位とで違いがあります。気胸のポイントは“空気は高いところに溜まる”ので、その姿勢で一番高い部分に気胸の所見が出る、でした。胸水は逆で“水は低いところに溜まる”ので、その姿勢で一番下になるところに胸水の所見がでます。それが立位と所見が異なる理由であり、臥位での胸水所見を見抜くポイントです。では見ていきましょう。
臥位胸水のポイント① 臥位では第8〜10胸椎のレベルが最も低い
臥位では最も低い部分であるTh8〜10レベルの鎖骨中線あたりから溜まり始めます。レントゲンで透過性低下を起こすには200mL以上が必要とも言われているようです。ちなみに立位では、まさにみなさんご存知の“C-P angle(肋横隔膜角)”から溜まり始めます。ここが立位と臥位の大きな違いです。(後述しますが、なので臥位胸水ではC-P angleが比較的後半まで保たれます)
臥位胸水のポイント② 肺の血管陰影は保たれる
臥位で胸水が溜まるのは肺の背側の胸腔内なので、肺の実質には異常ありません(肺の“後ろ側”に水が溜まっている、というだけ)。当然胸水量が大量になり肺が潰されて無気肺になれば肺の血管陰影は消失しますが、そこまでは肺の構造は保たれているので血管陰影は描出されます。ですので胸水の所見としては、背側の胸水を反映して「肺野全体的に透過性は低下しているが、血管陰影は認められる」という形になります。
臥位胸水のポイント③ 水の溜まり方=シルエットサイン出現の仕方を意識
では具体的に、どのような所見から胸水貯留を疑うか見ていきましょう。そのためには、胸水に貯留量に沿って、“どの臓器/部位とシルエットサインを作るか”を意識するのがよいと思います。
胸水が貯留していくと、まず下行大動脈に接し始めるので、まず「下行大動脈とシルエットサイン」が最初の分かりやすい所見です。さらに貯留してくると(主に左肺での話ですが)心臓の裏側に水が溜まり、この部分が無気肺になってきます。「心臓裏の肺の血管陰影の消失」が次のわかりやすい所見になります。同時期には主に中〜下肺野レベルですが肺野の透過性が低下していると思います。さらに貯留すると、いよいよ心臓と同レベルの高さまで胸水が上がってきて、「心陰影とシルエットサイン」の所見が出てきます。また横隔膜とも胸水が接するようになっているので、「横隔膜の不明瞭化」が起きています(立位で有名なCP angleの所見はこのレベルですね)。このレベルになると、肺野全体で透過性が低下しています。
このようにCTなどを参考に、解剖学的に考えると非常にイメージしやすと思います。
ここで1つポイントかる注意として、心臓裏の肺の無気肺化は胸水のみの所見ではない、ということです。この心臓の後ろ側は、気道内分泌物なども垂れ込みやすく気管内腔が閉塞する「閉塞性無気肺」が起きやすい部位ですし(ちなみに胸水による無気肺は「圧迫性無気肺」)、肺水腫などでは心臓の重みで容易に潰れやすい部位でもあり、また誤嚥などで肺炎も起きやすい部位になります。胸水以外の病変でも心臓裏の血管陰影は消失しやすいのは注意です。逆に言うと非常に所見が出やすい部位ですが、慣れていないと心臓の裏側は見過ごすことも多いのです。肺野に問題がなくても心臓裏に無気肺があるといったことはよくなるので、ぜひ意識して心臓の裏側も確認するようにしましょう。
今回は臥位レントゲンの第③弾:胸水を紹介しました。ぜひ①デバイス位置確認、②気胸などとも合わせて、確認してみてください。

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